ノイズ混じりのメモリー

壊れかけのラジオがわめく

誰かの手紙が読まれている

知らない誰かの名前が読まれていた

聞き流しながらアルバムを開いてみる

退屈しのぎにページをめくっていく

今

思い出が手の中にある

そこにいる男の子は笑っている

本当の笑顔を見せている

ページをめくるたび違う笑顔がそこにある

男の子はいつも笑っている

都合よく作られたアルバムに

泣き顔は無いし

怒りは感じられない

虚しさも写っていない

壊れかけのラジオがうめく

僕はそんなにも不安なのだろうか

ちがう

不安なんじゃない

寂しいのだ

新しい毎日は僕を塗り潰していく

それだって悪くはない

だけど失いたくない記憶がある

だから僕はページをめくる

忘れないために

毎日を生きぬく力となった日々を

忘れないために

そして新しい毎日を

力にするために